【天井クレーンと安全なものづくり】天井クレーンがあることで生まれる「安全」という価値。

【天井クレーンと安全なものづくり】天井クレーンがあることで生まれる「安全」という価値。

ものづくり工場において、品質の高いものを早く・効率的につくることは必須課題です。しかしそれ以上に大切なのが、安全にものをつくることです。天井クレーンは「重量物を運ぶ」というシーンに欠かせない機能を提供し、早く・効率的なものづくりに貢献しています。ただ、安全性という面ではどうでしょう。「安全なものづくり」に天井クレーンが提供している付加価値とはどのようなものなのか。メンテナンス担当として多様な工場を支えてきた岩田さんにお話を伺いました。

岩田宏|メンテナンス部
専門学校で電子制御などを学んだ後、1996年に愛和産業へ新卒入社。以来、現在までメンテナンス部にて天井クレーンのメンテナンスを担当するベテラン技術者。メンテナンスチームのリーダーの一人として現場を牽引する一方、安全衛生員として若手社員の教育にも取り組んでいる。

【安全なものづくりに貢献】天井クレーンが提供する「安全性」という価値とは。

――早速ですが、天井クレーンが工場にあることで「現場がより安全になる」という効果はあるんでしょうか。

岩田 直接的に提供している価値ではないですが、私は、天井クレーンが安全性の向上にも貢献していると思っています。

――基本的には「ものを運ぶ」というのが主な機能ですよね?

岩田 その通りです。工場の中で、人力では運べないもの。例えば工作機械にセットする金型は非常に重量がありますから、作業の段取り変更の度に天井クレーンが稼働する光景をよく見かけます。確かに、この場面で提供している価値は「重量物を簡単に運ぶ」という点です。天井クレーンがあることで早く・効率的なものづくりができるようになります。ただ、この時に「もし天井クレーンが無かったら?」という視点で見てみると、安全性という利点も浮かび上がってきます。

――もし天井クレーンが無かったら…「台車などを使って人の力で運ぶ」以外の方法が思いつきません。

岩田 そうすると、とっても危ないですよね。

――確かに。落としたり、どこかにぶつかったりするかもしれないです。

岩田 天井クレーンという設備があることで、工場の現場作業の危険性は格段に下がっているはずです。その意味では確かに「安全性」という価値を提供していると思います。

――なるほど。それでも、天井クレーンを使わないという現場もあるんですか。

岩田 お客様次第です。フォークリフトの方が小回りが効いて便利だというケースもあります。例えば、隣接する2つの工場間でものを運ぶ必要がある場合、天井クレーンの機能ではカバーできません。そうした条件がある現場では、運搬にフォークリフトが多用されています。

――どんな場所、どんな条件でものづくりをしているかによって違うんですね。

岩田 ただ、例えば金型をフォークリフトで運んでいる場合でも、最終的に工作機械にセットする時には天井クレーンが必要です。その方が楽だし、早いし、効率的だからという理由が大きいですが、そこには「作業の安全性が確保できる」という利点も重要視されているはずです。

【リスク管理】故障や事故を未然に防ぐことが最も大事な仕事。

――天井クレーンはとても便利な設備ですが、安全に使い続けるために必要なことはありますか?

岩田 たくさんあります。やはり、お客様の使い方次第で天井クレーンの寿命が短くなってしまったり、時には故障してしまうこともあります。

――どんな点に気をつけるべきでしょうか。

岩田 一番多いのはワイヤロープの劣化です。天井クレーンはワイヤロープでものを吊り上げますので、使い続けていくと、どうしても劣化します。私たちがメンテナンスをする際には、その点を重点的にチェックします。また、お客様にも普段から気をつけてもらうようにお話をしています。

――どんな点を見ていますか?

岩田 ワイヤロープって、何本もの細い金属の線を撚り合わせてできています。その中で一本でも切れているものがあれば、交換のサインですね。 

――一本でも切れていたらダメなんですね。

岩田 外から見えるのが一本なだけで、目に見えない内部で何本も断線しているかもしれないからです。私の経験上、「一本だけ切れている」状態が内部の劣化を示すサインであるケースが多いです。

――他には、どんなリスクがありますか?

岩田 分かりやすいのは、鉄骨そのものが劣化して亀裂が入ってしまうケースです。また、モーターが焼き切れてしまうケースもあります。こうした目立つサインの他にも故障の予兆はたくさんあるので、お客様に「どんな予兆があると危ないのか」という情報を常に共有することも大事な仕事です。また、故障のサインが出た際にはすぐに相談をしてもらうように呼びかけています。

【作業者の安全】メンテナンス作業の「ヒヤリ・ハット」とは。

――これまでは「お客様に提供している安全性」をお聞きしましたが、メンテナンス作業の現場で安全に関して注意していることはありますか?

岩田 もちろんあります。天井クレーンってその名の通り、工場の天井付近に設置されています。メンテナンスをするためには当然、高所作業が欠かせません。一番多いのは、10メートル位の高さに天井クレーンが設置してある現場でしょうか。中には20メートル、30メートルという高さに設置してある現場もあります。

――上までは、どうやって登るんですか?

岩田 工場の壁側に階段が設置されている現場もあります。ですが、10メートル程度の高さであれば梯子をかけて登っていくことが多いです。その場合、必ず二人一組で作業します。一人が梯子を支え、周囲の安全を確保する必要があるからです。また、上部で作業する人間は常に安全帯を手すりなどにかけて作業を行います。作業時は安全性を第一に考えて仕事をしていますので、これまで大きな事故が起こったケースはありません。

――高所での作業の他にも、気をつけている点はありますか?

岩田 その他で最も気をつける点は、電気関連でしょうか。電気の配線をチェックする際には必ずブレーカーを落として作業するなど、安全を保つために決められた手順があります。またここでも、必ず二人一組で作業に従事するというのは重要なポイントです。作業中に別のクレーンが動き出してしまう場合があり、常に周囲の状況に注意しておく必要があるからです。

【安全教育】定期的に安全について学ぶことで、全員の成長を促す。

――安全な作業のために、社内で取り組んでいることはありますか?

岩田 安全衛生委員をしていますので、過去の事故に関する情報をまとめ、対応策をメンテナンスチームに広報する活動を行っています。また、メンテナンスという仕事は車での移動が多いので、現場作業での注意点の他、車両を運転する際の注意点を広報することも多いですね。

――みなさんで定期的に集まり、安全について話し合うなどの機会をつくっているんですか?

岩田 定期的にKYT(危険予知トレーニング)を行っています。内容は時期によって違うのですが、現在は現場の写真を全員で共有し、その中に潜んでいる危険性をみんなで指摘していく活動を行っています。

――例えば、どんな指摘がありますか?

岩田 それほど難しいことじゃないんです。例えば、作業者の足元に工具が転がっていて危ないとか。作業者がヘルメットをかぶっていないとか。そうしたシチュエーションを故意につくって撮影をし、みんなに気づかせることで安全に対する意識を向上させる機会にしています。

――活動を通して皆さんの意識が変わってきたなど、効果を実感することはありますか?

岩田 若い子と一緒に現場で作業した時なんかは、ちょっと変わってきた、成長してきたと感じることがあります。具体的に「変わったポイント」をあげることは難しいのですが。一つひとつの作業の所作とか、立ち居振る舞いから成長を感じられた時は、自分の活動が実を結んでいるようで嬉しいですね。

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