新人たちの成長を誰よりも願うベテラン社員の育成奮闘記。

新人たちの成長を誰よりも願うベテラン社員の育成奮闘記。

毎年入社する新入社員たち。学生だった頃の生活から一変し、一人前になるために毎日必死で業務に取り組んでいます。一方で先輩たちも早く一人前になってもらうために、必死で指導します。先輩達は日々どんな思いで新人に接し、どんな苦労があるのでしょうか?現在新人の育成にも関わっている大ベテランの先輩に聞いてみました。

畑佐吉彦|メンテナンス部
1998年入社。メンテナンス部で現場作業やメンバーの統率に携わりながら、「個人能力アップチーム」に所属。メンテナンス部の新人の育成に携わる。会社からも大いに期待されており、大活躍しているベテランだが、入社理由は「家から近かったから」という単純なものだった。

【新人たちの印象】もがきながらも成長する3人。将来が楽しみ。

――入社1年目で現在研修中の新人3名(山田さん、黒野さん、山本さん)の育成に関わっているとお伺いしました。入社から1年ほど経ちましたが、3人の印象はいかがですか?まず山田さんから。

畑佐 山田くんは他の2人に比べて昨年10月からアルバイトで入社しているのですが、マイペースながらも入社当初に比べると各段に成長しました。

――ほう、マイペースなんですね。マイペースでも問題はありませんか?

畑佐 もちろん、問題はありません。覚えるペースは人それぞれですし、無理にやれと言ってもできるものではありませんから。個人の覚えるスピードによって指導を変えるのも私たち先輩の仕事です。

――なるほど、それなら安心ですね。では次、黒野さんはいかがですか?

畑佐 黒野くんは、とにかく飲み込みが早い。ハシゴを持ったりワイヤーロープをカッターで切る作業があるんですが、新人にはけっこう難しいんです。それを黒野くんは最初から何気なくできていましたね。

――ハシゴを持ったりワイヤーを切ったり。作業自体は誰にでもできそうですが、なぜ新人には難しいのでしょうか?

畑佐 コツが必要なのです。力のかけ方と言いますか。ハシゴも重いのですが、力の使い方次第でラクに持てるんです。しかし最初はそのコツをつかむのが難しいんですね。ところが黒野くんは最初から持つことができました。アスリートだったからですかね。あと、積極的に質問をしてくれます。細かく自分がわかるまで。そういう姿勢はいいですね。

――では山本さんはいかがでしょうか?

畑佐 山本くんは最初こそコミュニケーションが苦手なかんじでしたが、徐々に打ち解け、今は冗談まで言えるようになりました。

――それは、ご本人が努力したということですか?

畑佐 もちろんそれもありますが、周りの先輩たちも新人の様子をみて、積極的に声をかけたり、会話しやすいような雰囲気を作るよう、普段から心掛けています。最初はできなくても、頑張って努力をしている子は放っておかないといいますか。みんなでフォローしあって向上していこう!という意識のある職場です。

【嬉しかったこと】日々新人の成長が感じられることが、やっぱり嬉しい。

――新人から言われた言葉の中で、嬉しかった言葉はありますか?

畑佐 ある時、山本くんから「突発対応が楽しい!」と言われたことがあります。突発対応とは、言葉のごとく突然修理の対応を依頼されることです。クレーンが動かなくなったらすべての業務が止まってしまいますので、一刻も早く修理をしないといけません。

――山本さんは、どういうところが楽しいと思ったのでしょう?

畑佐 もちろんまだまだ本人が修理できるようなスキルは持っていないのですが、一緒に現場に行き、どうやって修理するのか?を見ながら学べるところが楽しいようです。

――突発対応って、難しい仕事なのではないのですか?

畑佐 そうですね。緊急出動でもあるので、けっこう大変だったりします。どんな故障なのかは現場に行って見ないとわかりませんし、直せるかどうかもその場でないと判断できませんから。毎回プレッシャーを感じます。山本くんもいずれ自分で直せるようになったら、「大変だ!」と思うかもしれないですね(笑)。

――他に嬉しかった言葉はありますか?言葉でなくても、行動などでも構いません。

畑佐 そうですね。山田くんの成長は嬉しかったですね。10月にアルバイトで入社した時にもメンテナンス部への配属だったのですが、やはり最初は何もできず、とまどうばかりで…。その後正社員になり、各部署で研修を受け、この10月にメンテナンス部に戻ってきました。すると、見違えるように成長していました。

――どういうところに成長を感じたのでしょう?

畑佐 昨年に入社した時は、本当に指定した道具を持ってくるなど簡単な仕事しか依頼できませんでしたが、今ではチームとして動けるようになったと言いますか。2人で作業する際にどこに立ち回ればいいとか、次に何の道具を使うのかがわかっているので、言われる前に持ってくることができるなど。まだまだ自分が率先して、ということではありませんが、補助者としては各段にスキルアップしていました。

【大変なこと】同じように指導するだけではいけない。1人ひとり、性格も理解力も違うから。

――新人教育の面で大変なことや苦労していることはありますか?

畑佐 理解力も覚えるスピードも人それぞれなので、1人ひとりに合わせて指導をしていくのが難しいですね。

――そういった難しさを踏まえて、どのように指導をしているのですか?

畑佐 まずは個々人の性格や特徴を把握することからですかね。同じように伝えても、伝わる人とそうでない人がいます。「◎◎くんはこの程度の説明で理解するけど、△△くんはここまで言わないと伝わらないな」みたいなことがわかるようになれば、最適な指導法もおのずと見つかります。

――これまで指導が難しかった人は、どんな人ですか?

畑佐 言うことを聞いてくれないケースです。できるだけ細かく指示を伝えたつもりだったのですが、それでも言うことを聞いてくれなくて。本当にわからないのか?それとも無視しているのか?わからないのであれば、そう言ってくれればいいのですが、それも言わないので…。正直困りましたね。その人はけっきょく自ら辞めていってしまいました。

――当たり前ですけど、先輩の指示が聞けないとやはり仕事にはなりませんか?

畑佐 そうですね。特に工場内ではどこに危険が潜んでいるかわかりません。安全面という観点からも、経験豊富な先輩の指示は聞くべきだと思います。まずは素直に聞き、やってみてほしい。ただ、何でもかんでも指示に従え!ということではありません。もし先輩から言われたことで納得できないことがあれば、その場で聞いてほしいです。必ず答えてくれると思います。

【気を付けていること】黙々と作業するだけじゃなく、コミュニケーションを大事に。

――先ほどの指導時の苦労も踏まえて、新人に接する時に心掛けていることはありますか?

畑佐 何よりも大事にしているのは、コミュニケーションをとることです。

――今の若い人たちは特に、口頭でのやりとりよりSNSなどのツールでやりとりすることが主流になっていますが、どのようにしてコミュニケーションをとるのですか?

畑佐 ウチでは直接の会話を重視しますね。特にメンテナンスの仕事は、現場への移動の時間も多いです。1時間か2時間は車で移動することがしょっちゅうですから、その間に自然と会話も生まれます。

――なるほど。その時はどういった話をするのですか?

畑佐 世間話から仕事の話まで、何でもしますよ。何気ない会話から悩み相談に発展したり、質問コーナーになったり(笑)。とにかく車の中での会話は、大事にしていますね。

――他に心掛けていることはありますか?

畑佐 現場での指示の出し方には気を遣っています。現場でまごついている新人がいたら、彼らの理解力不足なのではなく、自分たちの指示不足なのだと捉え、対処します。

――なるほど。でも皆さん忙しい中、指示が行き届かないケースもあると思いますが、どうされるのですか?

畑佐 どうしても適切な指示を出せない時は、新人の作業を止めさせます。「いったん待って!」と。で、指示できる余裕ができた時にきちんと指示を出します。わからないまま動かれてケガでもされるとたいへんです。特に新人は工場のどこに危険があるのか経験がなくわかりません。そういう意味でも作業を止めさせるようにしています。

――とにかく安全第一を心掛けていらっしゃるんですね。現在畑佐さんがみている新人3人に、将来どうなってもらいたいですか?

畑佐 この先どこに配属されるかはわかりませんが、早く一人前になってリーダーになり、同じ立場で一緒にチームを組めたらいいなと。そうなってもらえるよう、今後も指導をしていきます。

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