およそ、世の中のほとんどの企業には経営理念があり、会社は経営理念を根本として運営されていく。さて、愛和産業の経営理念は「人間力」。うん、人間力。大事ですよね。でも改めて考えてみると、あまりピンと来なかったりしませんか?人間力ってなんでしょう。なんで、経営理念になっているのかな?若手社員の小島さんと一緒に、人間力について考えてみました。
小島大樹|2018年入社
大府工場の製造課にてクレーンの据付工事や製造業務を担当し現場経験を積んだ後、社長室付の主任として大府工場の改善に取り組む。工程の改善や原価管理手法の改善など、複数の側面から大府工場の業務改善にあたっている。
小島さんは、人間力ってなんだと思いますか?
――愛和産業の経営理念は人間力。これは社員の皆さんなら知っていることだと思います。でも、一歩ひいて学生の目線から見るといまいちピンと来ていなかったり、綺麗ごとに見えているかも知れないと思うのですが。改めて、小島さんが思う人間力ってなんでしょう?
小島 私の場合、改めて「人間力とは?」を考え直してみると…飲食業の経験で学んだことがベースになっているかも知れません。というのも、愛和産業へ入社する前は飲食業で店長として働いていたんです。その前、学生時代も飲食店でアルバイトをしていました。そこで教わったのは、飲食業で一番大事なのは目の前のお客様にいかに満足して帰ってもらうかということです。アルバイト時代はあまり真剣に考えていなかったですが、社会人になって店長として経験を重ねていくに連れて、目の前のお客様の気持ちを汲み取ることの大事さに気づきました。
――お客様の気持ちを汲み取る、というのは具体的にどんなことなのでしょう。
小島 それほど難しいことじゃない気がします。例えば、どんなタイミングでオーダーを取りに来て欲しくて、料理はどんなペースで出して欲しいと思っているのか。相手をよく観察して、何をして欲しいと思っているかを汲み取って、それに応えること。第一に、お客様のために仕事をしているという点を忘れないように…というのは飲食業で学びました。
――なるほど。分かるような気もします。でも、愛和産業とは業種が違うからイメージしにくい部分もあります。
小島 私はとてもシンプルに捉えていて、それは「次の人のことを思う」ということなんじゃないかな。例えば、工場の機械が壊れていることに気づいたら自発的に修理をする。そうすれば、次に使う人が助かるじゃないですか。あるいは、ゴミを拾う、汚れている箇所をきれいにする、棚の整理をしておく。こうしたことを全くしない人って居ないと思うんです。でもそれって実は、次の人のことを考えた上での行動で、それが人間力なんじゃないかと捉えています。
――「次の人」。例えば、自分の担当作業の次の工程を担当する人とか。自分の仕事に関係する全ての人を思って行動することが、人間力なんですね。
小島 私はそう思っています。他の考え方もあると思いますけど。でも、人の為を思って行動するというのは、どんな仕事にも必要な力だと思います。私自身、飲食業からこの業界へ移ってきても、必要な人間力は共通していると感じています。それは社内の仕事でも同じで、例えば製造からメンテナンスへの異動、あるいは設計への異動など。他の部署の仕事に変わったとしても人間力は共通のスキルだと思います。どんな仕事に変わっても通用する人間になれるかどうかは、人間力の成長にかかっているのではないでしょうか。
人間力って、なんで必要なんですか?
――「関わる人のことを思って行動する」って大事なことですね。でも一方で、自分のスキルだけ伸ばせればいい、という考え方の人もいると思います。
小島 いるでしょうね。というか、だいたいの若い人はそうじゃないかな(笑)。私も会社の中では「若造」の部類に入りますが、そうした考えから脱却できたのは、飲食業の経験が大きいと感じています。
――そんな若者たちに何か言ってあげるとすれば?
小島 「なぜ、この仕事をするのか」を考えることだと思います。私たちの仕事で言えば、表面的にはクレーンをつくる・据え付ける・直す、という作業が仕事と言えます。でも文頭に「なぜ」を付けると少し違ってきます。「なぜ、クレーンをつくり・据え付け・直す」のか。問いの先には、「お客様がより仕事がしやすくなるように助けるため」という答えがあります。ただ目の前の作業を終わらせることが仕事ではなく、お客様へ「仕事がしやすくなる」という価値を提供するのが仕事の本質だと思っているのですが。
――目の前の作業を終わらせるだけでは仕事になっていない?
小島 目の前の作業だけを追いかけてしまうと、どうしても「面倒だ」という気持ちが先立つと思います。確かに、自分の作業だけ終わらせるという考えでいたほうが楽です。例えば、クレーンを製造しているときでも「こうしたほうがお客様の仕事が楽になるな」と思いつくことってあると思うんです。でも、そこに手を出すと自分の作業が長引いてしまうし、「こうしたほうがいい」と発言すれば責任も伴うから、「面倒だ」という思いが先立って行動に移せなくなる。ただ、それって本当に仕事していることになるのかな、私は違うと思っているのですが。
社員の皆さんは、
人間力を意識しながら働いているんですか。
――社員の皆さんも、小島さんと同じように人間力を大事にして働いているんでしょうか。
小島 正直に言うと分からないです。ただ、それが人間力だと気づいていないだけで、人のために何かをするということは絶対に誰でもやっていることだと思います。
――例えば皆さん、どんな行動をしているのでしょう?
小島 ちょっと極端な例ですが。大府工場にいる50代の大先輩はいつも、定時の2時間前に出社して社内や近隣の掃除を行っています。その姿を見るといつも感心しますし、見習わないといけないと背筋が伸びます。
――それは凄いですね。でも、誰もが同じ行動ができるわけじゃない。
小島 おっしゃる通りです。私も同じことができるとは思いませんし、皆が同じことをするべきだとも思いません。でもその方は、周りが気持ち良く仕事ができるようにと思って行動しているはずで、それって人間力だし、学ぶべき考え方だと思っています。
みんなが人間力を発揮できるようになると、
会社ってどうなるんですか?
――社員の皆さん、一人ひとりが人間力を意識して仕事ができるようになると、どんな未来が待っているのでしょうか。
小島 一人ひとりが次の人のことを考えながら仕事をしていくと、最終的にはお客様に提供できる価値の向上につながるはずです。例えばミスが無くなる。それだけではなく、より使いやすく・長く・低コストで稼働する機器を提供できるようになり、今よりもっとお客様の仕事の手助けができるようになる。そうすれば、大袈裟に言えば愛和産業の存在価値が大きくなり、社会に欠かせない集団になれるのではないでしょうか。そのためには、同じことかも知れませんが、一つの作業に対して「なぜ、それをやるのか」を考え、理解を深めることだと思います。設計であれば、数字が見にくい箇所の記述方法を改善してあげる。すると次の工程で寸法間違いを削減でき、手間をひとつ減らすことができます。一人ひとりが目の前の作業をこなすだけではなく、作業の意味を理解できれば「いい連鎖」が生まれ、お客様の元にまで届くのではないかと思っています。
――小島さんはこの先、どんなところで人間力を発揮したいですか?
小島 現在、大府工場の改善担当として仕事をさせてもらっています。大府工場はクレーンの製造をメインに担当している事業所です。大きなクレーンをゼロから形にしていくという、分かりやすいやりがいがある反面で「利益」という視点では存在意義を示しづらい一面があります。なにしろ巨大なクレーンをつくるわけですから、材料費などの原価も大きく、多くのパートナー企業と協力してつくるために外注費もかかります。当然、社内の工数も膨大です。そのため、利益という視点でどれだけ会社に貢献できているか分かりにくく、一人ひとりのスタッフもあまり自覚できていないのではないかと思っています。そこを変えていきたいです。改善担当という立場に立たせてもらっているおかげで、ある程度、製造作業を俯瞰で把握できるようになってきました。そうすると、作業方法や原価管理の手法など、無駄な点が多いことが分かってきたんです。それらを、みんなの人間力を集めて改善し、大府工場の存在意義をもっと示していきたい、それが今の目標です。